仏教あれこれこぼれ話

仏前結婚式について


 人生の節目である結婚式は、成人した男女が不思議な縁によって結ばれ、社会生活をスタートさせるための大切なセレモニーです。
 結婚式と聞き、皆さんは何を想像されるでしょうか?
 神様の前で誓いを立てる神前式、キリスト教式、また最近では、人前式という形式も増えているようです。
 しかし、私達の最も身近な存在である仏教の結婚式を、皆さんは御存知ないのではありませんか?
 仏教というと、お葬式や法事など、とかく暗いイメージがつきまとい、敬遠される方も少なくないと思います。
 しかし仏様の前に於いて、結婚の誓いを立て、末永い幸せを祈り、仏、法、僧の三宝に帰依する仏前結婚式は、仏教徒の結婚式として一番ふさわしいものだと思います。厳粛な雰囲気の中、儀式を通して参列者一同が御仏のおしえを戴くことができることは、また一段と意義深いものがあります。
 ここでは、実際行われている結婚式の式次第に沿って、仏前結婚式がどのような儀式であるか順を追って紹介していきたいと思います。
結婚式次第
法 鼓 結婚式(法要)が始まる事を告げる太鼓です。
親族着席 泰楽(雅楽)の奏楽が始まります。
開式告辞 司式(司会)が仏様の御宝前において結婚式を行うことを告げます。
新郎新婦入堂 新郎新婦、媒酌人が式場に入ります。
戒師入堂 戒師とは、仏教徒としての基本である明るく(仏)正しく(法)仲良く(僧)の精神と、新家庭を築くためのお諭し事をして下さる方です。
道場洒水 結婚式にふさわしい道場にする為、四天王をお迎えし、香水によって道場をお清めします。
無言三礼 参列者一同も戒師にならい頭をお下げします。
四奉請散華 諸仏、諸菩薩並びにご両家の御尊霊をお迎えし、極楽の蓮の華の御供養を致します。
表 白 戒師より仏様に、幾久しくご加護を頂く願いを込めて結婚式の旨を申し述べます。
戒師転向 これより新郎新婦にお授け事、お諭し事をする為、戒師は高座へ転向します。
新郎新婦焼香 新郎新婦は戒師の前へ進み、お願いの心をこめてお焼香します。
行華焼香 行華の由来により、新郎は五本新婦は二本の花を仏様に捧げます。続いて、御両家の御先祖様に感謝の心をこめてお焼香します。
聖水灌頂 仏様の清らかな香水により、身も心も清めます。
合掌して頭を下げて、戒師より香水を頭に戴きます。
懺 悔 私達は毎日の生活の中でお互い助け合って生きていかなければなりませんが、知らず知らずのうちにこの身、この心で傷つけてしまっています。
その身、その心を仏様に懺悔、告白します。
授与三帰三竟 仏様の前で明るく、正しく、仲良く生きてまいります。という誓いをして頂きます。
仏教徒の一番大切な三帰を授けます。
我弟子等 願従今身 尽未来際
帰依佛両足尊 帰依法離欲尊 帰依僧衆中尊
我弟子等 願従今身 尽未来際
帰依佛竟 帰依法竟 帰依僧竟
寿珠授与 お互いに仏様のおしえに順じて日暮しをして頂く証として、新郎新婦に数珠を授けます。
指輪交換 お互いに指輪を交換致します。
授与十念 戒師より十遍のお念仏を授けて頂きます。
誓漿交歓 幾久しく仲良く扶け合い幸せに暮らす事を約束する、夫婦契りの盃。三三九度の儀。
親族固めの儀 御両家の深いご縁を共に喜び末永い交誼と弥栄を願う盃の儀
誓詞朗読 新郎新婦は、戒師上人証明の許、仏様の前に誓いの言葉を述べます。
戒師複座 戒師は本尊前にお直りになります。
成婚奉告 仏様に無事結婚式が円かに進行できたことを感謝し、ご両人、ご両家が末永く幸せであることを奉告します。
請護念偈
無言一礼 戒師上人が仏様に恭しく一礼します。一同も同じく頭をお下げになります。 
戒師退堂 戒師上人がお下がりになります。
新郎新婦退堂
親戚紹介
閉式告辞 司式は結婚式が無事円了したことを告げます。
一同退堂
 以上のような次第で仏前結婚式を執り行います。
 厳粛で荘厳な法要でもある仏前結婚式は、必ずや感動する儀式であると確信しています。
 これから新しい生活をスタートさせようとお考えのお二人に、是非ともお勧めしたいと思います。
 仏前結婚式を挙げるのは、お寺で行うのが普通です。実際、結婚式場やホテル等では挙げられないと思います。(あっても極少数だと思います。)では、どこに頼めばよいかわからないということになると思いますが、そのような時は、まず日頃お世話になっている菩提寺の住職にお聞きするのが良いと思われます。相談次第でそのお寺で結婚式が挙げられるように住職が取り計らってくれるでしょうし、もちろん当寺でも相談を承ります。
 結婚式の内容や、場所等、もっと具体的に知りたいと思っている方は、メールにてお問い合わせ頂きたいと思います。

仏前結婚式の中で行う行華(あんげ・仏様に花を捧げる儀式)の由来

 仏本行経及び、過去現在因果経等のお釈迦様の前世物語によれば、むかし燃燈仏がこの世にお出ましになり説法をされていた時、ときの国王が仏様にお花を供養して、その功徳を独占しようと欲し、国中にお触れを出して花を城じゅうに集めさせた。時に雲童子という青年があって彼もまた花を仏様に捧げようと思ったが、求めることができずに困っていたところ、たまたま賢者という少女が七本の花を持ってお城に急いでいるのに出会った。
 そこで彼は少女にその花を売ってくれるように頼んだが、彼女はこの花は王様のご命令によってお城に持って行く途中であるから売るわけにはゆきませぬと言う。青年は尚も懇願し、遂に全財産五百金を差し出して漸く彼女より花五本を譲ってもらい、仏様の許に趣かんとした。その様子に、少女は仔細を尋ねたところ、青年は仏様に花を供養すればその功徳大なることを諄諄と説いて聞かせたので、彼女もまた残りの二本を仏様に捧げんものと彼と共に燃燈仏の御前に赴き、これを献じたのである。この縁によって青年と少女は生々世世夫婦となり、遂には青年はインドマカダ国のシッダルタ太子として生まれ、少女は隣国の王女ヤショダラ姫として生まれ、現世において又もや夫婦となられたという。シッダルタ太子は後に釈迦如来となられた、お釈迦様の前名である。
 以上のような故事により、仏教徒は仏前に男子は五本、女子は二本の花を捧げて結婚の証とするのである。これを「行華」(あんげ)という。